問道MONDŌ
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実践19·9

広げる問い、絞る問い

発散と収束を、混ぜない

「いい案を出して」と一度で頼むと、なぜか無難で忘れやすい答えが返る。あなたは“たくさん出す”と“ベストを選ぶ”という、正反対の二つを同時に頼んでいるからだ。広げる(発散)と絞る(収束)は、別の作業。今どちらをするかを決めて問うと、思考が立体になる。

この講のねらい
  • 発散(広げる)と収束(絞る)が、正反対の作業だと理解する
  • 発散では量と多様性を、収束では基準と取捨を、別々に頼める
  • 「広げてから、絞る」順序で、凡庸な折衷を避けられる

「いい企画を出して」と頼んで、なんだか無難で、すぐ忘れそうな答えが返ってきた——そんな経験はないだろうか。原因は、あなたの問いにある。あなたは一つの質問で、実は正反対の二つを同時に求めている。「たくさんの案がほしい」と「その中のベストを教えて」だ。両方をいっぺんに頼まれたAIは、折衷を返す——少数の、あらかじめ無難に選ばれた案を。

INSIGHT二つの思考は、混ぜると濁る

広げる(発散)と、絞る(収束)は、正反対の心の動きだ。発散は、量と多様性を求め、判断を保留する。収束は、基準を当て、切り捨て、決める。アクセルとブレーキを同時に踏んでも前に進まないように、二つを一息でやろうとすると、どちらも中途半端になる。だからまず、自分が今どちらをしたいのかを、決める。

広げる問い

まず「広げる」モード。合言葉は、質より量、そして判断の保留だ。「実現性は無視して。突飛でも構わない。毛色の違う案を15個。今は良し悪しを言わないで」。早すぎる判断は、いちばん遠くまで飛んだ案——平均から外れた、面白いもの——を、芽のうちに摘んでしまう。広げる時間は、わざと評価を止める。企画の切り口でも、研究の仮説でも、デザインの方向でも、同じだ。

絞る問い

次に「絞る」モード。ここで初めて、評価の物差しを渡す。「この3つの基準(続けやすさ・効果・コスト)で上位3つに。落とした案も、なぜ落としたか一言で」。基準を渡さずに「いいのを選んで」と頼めば、AIはまた“無難に良さそうなもの”=平均を返す。何を大事にするかを言葉にして初めて、収束は鋭くなる。

広げてから、絞る

鉄則は、順番だ。広げてから、絞る。同時にやらない。発散の途中で「で、どれがいい?」と聞けば、その瞬間に視野は狭まり、残りのアイデアは出てこなくなる。そして——どちらのモードに入るかを決めるのは、AIではなく、あなただ。AIは、あなたが今“広げたい”のか“決めたい”のかを知らない。だから、宣言してから問う。

BEFORE · 曖昧

いい企画を出して。

AFTER · 設計された問い

まず発散:実現性は無視で、毛色の違う企画を15個、批評はなしで。——(出そろってから)次に収束:『新規性・実現性・コスト』で上位3つに絞り、落とした理由も一言で。

一度に頼むと、AIは“少数の無難な折衷”を返す。広げる→絞るを分けると、飛んだ素材の中から、基準で選び抜ける。
注意広げっぱなしも、絞りっぱなしも

どちらかに偏ると、それぞれの失敗が待つ。広げるだけ——アイデアの山ができるが、使われないまま終わる。絞るだけ——最初から「ベストは?」と聞き、見ていない選択肢の中の“当たり”を、永遠に知らずに進む(その「ベスト」は、たいてい平均か、最初の思いつきだ)。両方を、順番に。そして最後の取捨——何を大事にし、何を捨てるか——の基準は、AIに丸投げせず、自分で握る。

AIの“平均”から抜け出す講でも、「広げてから絞る」に一度触れた。本講は、それを思考の基本動作として立て直したものだ。広げる局面では『複数の視点を出す』『小さく分ける』が、絞る局面では『自分で点検させる』が効く——どの道具を、どちらのモードで使うか。その一段上の見極めが、発散と収束の切り替えだ。

発散→収束を一度に体験する

良い問いを立てる人は、自分が今「広げたいのか、決めたいのか」を、いつも分かっている。たくさん出させて、判断を遅らせる。それから基準を持ち込み、選び抜く。この二つを、混ぜずに、順番に。発散と収束を意識して切り替えること——それも、問いを立てる力の確かな一部だ。