問道MONDŌ
← カリキュラム
実践10·10

渡してから、問う

AIを“神託”にしない、下ごしらえの一手

初心者はAIを「何でも知っている神託」として問う。熟達者は、自分の資料を読ませてから問う。AIの曖昧な記憶より、あなたが今渡した文章のほうが、答えの根拠としてずっと強い。幻覚と的外れを、まとめて減らす一手だ。

この講のねらい
  • AIを「神託」でなく「資料を渡して使う相棒」と捉え直す
  • 記憶頼みの問いと、地(ground)を渡した問いの差を体感する
  • 手元の資料・データ・メモを“下ごしらえ”として先に渡せる

多くの人は、AIを「何でも知っている存在」として問う。「〜について教えて」と。だが本当に効くのは、その逆だ——まず手元の材料を渡し、それを“地”にして問う。AIの記憶を当てにいくより、確かな足場の上で考えさせる。

INSIGHTなぜ効くのか

AIの「記憶」は広いが、ぼんやりしていて、古かったり混ざったりする。一方、あなたが今貼った文章は、確かな“地(ground truth)”になる。「この資料だけに基づいて」と縛ると、AIは推測ではなく、目の前の事実から答える。研究でも、文脈を与えると幻覚や的外れが大きく減ると報告されている。

料理と同じ、下ごしらえ(mise en place)

良い料理人は、火にかける前に材料を切りそろえる。AIも同じだ。問いを投げる前に、判断の材料——資料、データ、過去のやり取り、自分のメモ——を“まな板”に並べる。下ごしらえに数十秒かけるだけで、出てくる答えの質が変わる。

BEFORE · 曖昧

新しい就業規則で、有給はどう変わった?教えて。

AFTER · 設計された問い

次の就業規則(抜粋)だけに基づいて、有給の付与日数と申請期限を答えて。書かれていなければ『規定に記載なし』と言って。 (ここに規程の本文を貼る)

「教えて」は曖昧な記憶を引く。「これに基づいて」は確かな地を踏ませる。後者は、あなたの現実に当たった答えになる。

渡せるものは多い——契約書、論文、長いメール、会議メモ、データの一部、自分の下書き。文系でも理系でも、家計でも研究でも、“手元の一次資料”がいちばん強い根拠になる。

「資料に限定する」を道場で試す
注意下ごしらえも、万能ではない

地を渡しても、AIが資料を読み違えたり、こっそり外の知識を混ぜることはある。だから「資料にないことは『ない』と言って」と添え、重要な点は自分でも資料に当たる。下ごしらえは、幻覚を“なくす”のではなく“大きく減らす”一手だと心得る。

AIに何を「思い出させるか」ではなく、何を「渡すか」。問う前のひと手間が、答えの土台ごと変える。神託を仰ぐのをやめ、材料を携えて問う——それが、地に足のついた使い方だ。